救急医療の実態に目を向ける

救急医療の現状を取り巻く環境にも、人手不足の問題が大きく影を落としている。高齢化社会を迎えた日本では、救急車の利用についても、緊急性の低い利用が問題視されるなど、課題が山積している。ただでさえ人手不足が続く医療現場にとっては、一刻の猶予もない状況が続いている。

突然の体調不良や不慮の事故などによって、救急外来で運ばれてくる人への対応をするのが、救急医療チームの役目である。中には、意識を失った状態で担ぎ込まれる患者もいるため、現場は緊張感に包まれている。対処を間違れば、命の危険にさらされることになるのだ。

医師や看護師などの医療従事者の連携が必要なことはいうまでもない。災害医療などへの関心も高まっており、一般の方の間でも心臓マッサージなどの応急処置を行おうとする傾向が見え始めている。大規模災害に見舞われるリスクが大きい日本で暮らすには、必要なことといえるだろう。

救急時における関心が高まったとしても、救急医療の現場を決定的に楽にしてくれるには程遠い現状が続いている。とりわけ地方山間部では、ドクターヘリの活用も頻繁に起こっている。離島や遠隔地に住む人の健康をいかにして守るかも、大きな関心事である。

厚生労働省をはじめ、国や自治体の後押しが必要なこともいうまでもない。利潤追求の考えに基づく医療サービスでは、到底、急を要する現場では太刀打ちすることはできない。福祉医療を考える上での最も基本となる点である。